2008年06月03日

土曜日午後7時の約束に、彼女は少し遅刻して来た。
中学生と小学生の二人の娘の夕食の支度に手間取ってしまったと、謝る。
「いつも出かけにバタバタしてしまう。もっと早くから用意を始めれば良いのにって、いつも思うんだけどね・・・。シシャモがなかなか焼けなくって・・。」
化粧気のない顔に、柔らかな笑顔が、いつ逢っても魅力的な人だ。
~大人が楽しむために~

北摂には、美しい公園がたくさんある。「ゆめのみ公園プロジェクト」は、その美しい公園を、親と子・子供同士・親同士・地域の人たち・それから公園を楽しむ老若男女全ての人達の「つながりの場」として、色々な取り組みを企画し、実践している。
–主に親子向けの企画を開催していらっしゃる様ですが、やっぱり子を持つ母親の目線ですか?
ほとんどのメンバーが子育て世代で、そうでない方々も、やっぱり子供を暖かい目で見ていらっしゃるので、子供向けの企画は多くなりますね。子供達 に、親以外のたくさんの大人達と触れ合うことで、色々な価値観を身体で感じて欲しいと思っています。けれど何より大事にしたいのは、大人が楽しむ事です。
公園を使って、「こんなことがしたい」と発想し、それを実現させるために、大人の知恵を使う。誰かにやらされているのではなくて、自分自身が、実現に向けて動く事を、楽しむ。それが一番大事だと思っています。
大人が楽しんでいる姿を、子供達に見せる事が出来るのは、何よりの事だと思います。
~彼女の周りに人が集うわけ~

彼女の周りには、自然と人が集まる。自身が積極的に、人と関わるために奔走しているからでは決してなく、気がつくと、人の輪が繋がっていく。
「私が頼りないからじゃないかなあ。一生懸命な時には、それこそ必死になるのだけれど、何もしない時には、本当に何もしない。周りの人達に、次、● 月●日までに、これ、やっといてねって言われて、ハイ分かりましたって。そんなんだから、ほっとけないなあ~助けてあげなくっちゃって、手を差し出してく れるのだと思います。」

それでも、彼女の中には、自分で作った自分の為だけのハードルが、あるのだそうだ。外から見るとなんだか緩やかに流れているようでも、そのハードル を超えるための努力は欠かさない。他の誰かと自分を比べるのではなく、他の誰かをむやみに否定も拒絶もしない。私には私だけのハードルがあって、他の誰か には、その人だけのハードルがあって・・・それで良いのだと。彼女のそう言う価値観に、周りの人はふっと肩の力が抜けるんじゃないだろうか、私も含め て・・・。
~うしろめたさ~

中央、白い服の女性が縄稚さん
彼女は大阪大学の職員としても働いている。それまではパート勤務だったが、試験を受けて、今年の春から正職員になった。ただでさえ忙しいのにどうしてと、理由を聞いているうちに、それも彼女が自分のために作ったハードルなんじゃないだろうかと言う気がした。

「9時~5時の勤務時間は変わらないから、家の事との両立もなんとかなるだろうと思っていたんだけど、予想以上に子供に負担をかけているような気がする。家の子ね、学校の事とか友達の事とか、好きな子がいるのかどうかとか・・・
そ う言う事、全然私に話してくれないんです。だから、私、子供の事とかあんまり知らないかも・・・娘達は、言ったってどうせちゃんと訊いてくれないって、 思ってるんじゃないかなあ。お母さんは自分の事に忙しくて、私達とちゃんと向き合ってくれないって、不満に思っている様な気がする・・・」
仕事を持つ母親なら、きっと一度は頭をよぎるだろううしろめたさを、彼女も感じているようだ。

「他のお母さん達の話を聞くとね、みんなよく自分の子供の子と知ってるでしょ?できるだけ時間を作って子供といろんな事を話しているみたいだし・・私、そう言う事、ほとんどできてないなぁ」
自身の事は、他人は他人と思っていても、子供の事になると、やっぱり彼女もそうはいかないようだ。
どんな母親でも、子育ては試行錯誤。
大丈夫。シシャモ、ちゃんと焼いてあげるんだからと、母親同士慰め合った。
取材・文:MAKI
